
SAPPORO LEGAL AFFAIRS BUREAU
制度を「知ってもらう」から始める広報設計
法務局という存在をもっと身近に
札幌法務局からのご相談を受けたことをきっかけに、本プロジェクトは始まりました。
当初のテーマは「自筆証書遺言書保管制度」という制度の認知をどう高めていくか、というものでした。
法務局という機関そのものが、市民の日常生活とはやや距離がある存在であることから、制度の価値を広く届けるためには、
制度の紹介だけでなく、”法務局とはどういう場所なのか”というところから丁寧に伝えていく必要があると考えました。
また、制度そのものがとても有益であるにも関わらず、その存在すら知られていないという現状は、
情報の設計や届け方に大きな改善余地があることを示していました。
私たちはまず「法務局をより生活者目線で語る」ことから広報戦略を設計し始めました。
物語で届けるというアプローチ
自筆証書遺言書保管制度のメリットは非常に明確です。
自宅で作成した遺言書を法務局に預けておくことで、死後、法的に有効な形で遺言が実行される仕組み。
紛失や改ざんのリスクもなく、家族間のトラブルを未然に防ぐことができます。
しかし、この制度の説明をそのまま伝えても、日常生活を送る人々には響きにくい。
そこでmonocyteは「ストーリーベースのコンテンツ制作」を提案しました。
相続トラブルの典型例をもとにしたシナリオを構築し、
親が亡くなった後に発生する財産分割の問題、それによって生活が脅かされる配偶者や子どもたちの葛藤、
そしてそこにあらかじめ用意された遺言書があればどう違っていたか——そんなifストーリーを動画化。
実際の広告映像では、家族の会話や感情の揺れを繊細に描き、視聴者が「これは自分たちにも起こりうることだ」と感じられるよう工夫しました。
LINEと広告、2つの軸の統合
制度の存在を知ってもらうだけでなく、具体的なアクションに繋げるための設計も重視しました。
そこで導入したのが「公式LINE」です。
YouTube広告のクリエイティブには公式LINEの登録導線を明確に設け、広告視聴 → 登録 → セミナー参加という一連の流れを意識して構築。
また、広告動画はロングバージョンとショートバージョンの2パターンを用意し、ABテストを通じてどの構成がより効果的かを検証しました。
北海道全域(特に札幌法務局の管轄地域)に向けて配信を行い、総再生回数は約60,000回に到達。
登録者数は約400人を記録し、国の機関としては異例の数値を獲得。
適切な情報設計とユーザー導線の構築によって、制度を必要とする人々に、確実に情報が届くという成果を実感しました。
アンバサダーという新しい取り組み
さらに制度を生活者にとって“自分ごと”にするために、アンバサダー施策を導入しました。
起用したのは、北海道を拠点に活動するアナウンサー・インフルエンサーの大家彩香さん。
高い認知度と信頼感を持つ彼女を通して、法務局の制度を「親しみやすいもの」として伝える狙いがありました。
ポスター、等身大パネル、バックパネル、チラシなど、すべてのビジュアル制作はmonocyteが手がけ、
法務局に対する“堅い”“遠い”といったイメージを払拭するためのビジュアル戦略を実行しました。
また、大家さんが実際に制度の利用シーンを紹介するような今後の動画企画も進行中で、
よりリアルな「使われ方」の訴求が期待されています。
制度を届ける、という文化をつくる
自筆証書遺言書保管制度のような公共制度は、生活に大きな影響を与えるにも関わらず、
情報が届いていない、または難しすぎて理解されないという現状があります。
私たちは今後も、生活者と制度を繋ぐ“翻訳者”として、制度が届く社会をつくっていきたいと考えています。
制度を知ることは、生き方の選択肢を増やすこと。
その第一歩をデザインとストーリーで後押しできたことを誇りに思います。
- Direction
- Movie
- Advertising
- Line
- Design
Client : 札幌法務局